4.オリーブの品種
人類はかつてサルであった時代から、毎日食べ続けています。今日の文明社会では,ほとんどの人達が自分で食糧を生産することなく他の人達の作ったものを食べ、自分は食糧生産以外の活動に従事しています。これはごく最近の現象であり,人類は長い間食べ物を自分たちの手で確保することこそが主な仕事でした。約1万年前に,世界各地で植物を自分たちで栽培する「農耕」が起こり,そしてそこで多くの古代文明が成立しました。以来人類は長い時間をかけ,野生の動植物を改良発展させてきました。英語で“カルチャー”と聞くと「文化」で、芸術、美術などを思い浮かべますが、もともとの意味は「耕す」ことで、栽培も培養も養殖も英語では「カルチャー」、そして品種は「カルティバー」です。
人類の歴史で最初のオリーブ栽培は今から8千年から6千年前に中東で始まったと言われています。栽培の伝播とともに、気候・土壌・栽培目的・栽培方法・収穫方法などに適合するように品種改良がおこなわれてきました。2010年の最新の国連食糧農業機関FAOの調査では、世界で2,629種のオリーブの品種が確認されています。
現在栽培されている主な品種は、オリーブオイル向き、テーブルオリーブと呼ばれる漬物向きに大別されますが、両方に向く品種もあります。オリーブオイルの需要が高まり、よりオイルの含有量の多い品種、さらに高品質のオイルが取れる品種が多く栽培されるようになりました。また灌水する、肥料を与える、機械で収穫すると言った現代の栽培法に向いている品種、病害虫に強い品種への改良が各地で行われています。例えば、スペインのコルドバ大学では、1991年から世界オリーブオイル協会(IOC)などと協力して、「共同オリーブ品種改良プログラムJOBP」を実施し、多くの品種改良種の試験栽培を進めています。すでに開発された新品種が商品として苗木の価格にロイヤルティーを上乗せし販売され、各国に広がっています。
イスラエルとパレスティナで1935年に行われた調査では、この地にソウリやナバリなど27種の伝統的在来種が6つの地域(ガリラヤ湖地域、カメール地域、サマリア地域、内陸地域、エルサレムとジュディア地域、そして南部地域とガザ地区)に分布していることが報告されています。イスラエルでも高品質オイルや最新の高密度栽培に適した品種に置きかわりつつあり、在来種の栽培は少なってきていますが、イスラエル植物遺伝子バンクでは、在来種も含め保存研究しています。
オリーブは品種によってオイルに含まれ健康に良いといわれるオレイン酸やポリフェノールの量が違い、それによって風味が異なります。同じ品種でも天候、栽培地、栽培方法で風味が異なります。例えば、スペイン原産種アルベキーナをイスラエルで栽培するとオレイン酸は60%より少なくなり、ポリフェノールの量が減り、苦みが和いだという研究結果があります。伝統的にイスラエルで栽培されている多くのソウリは灌漑を使わず、このため味が強く、辛く苦味があり、好き嫌いが分かれる風味があります。最新の灌漑技術と徹底管理の農法によって栽培されたソウリは、強い緑のオリーブの味、苦味はほとんどなく、わずかな辛みが象徴的で、スムーズで親しみやすい風味となっています。
イスラエルでオリーブの品種改良が始まったのは50年ほど前です。その一つバルネアはイスラエルで開発され、最も成功した品種です。開発期間中のコード“K-18”としても知られています。成長力があり樹形は上に伸びる品種で、これは機械で収穫する最新の栽培方法に適しています。栽培して3年目には花が咲きますが、授粉のために他の品種が必要です。また灌漑することでよい品質の果実が生産できます。イスラエルのみならず、1995年にニュージーランド、1997年にはオーストラリア、そして今はイタリア、米国、南米、さらには中国、インドにも広がっています。
イスラエルでのもう一つの新品種アスカルは、このバルネアとイタリア原産種マンザニーロを交配してできた品種です。その木は勢いがよく真っ直ぐに伸び、異なる天候や土壌の土地にもよく適合します。アスカルのオイルの風味は、強烈なオリーブと草の香りが特徴です。味は苦味と辛みが強く、抗酸化要素がたくさん含まれています。他の国の品種改良種と同じように、特許があり、苗木の購入にはロイヤルティーを支払う必要があります。